Miyashita Mariko

2011年10月アーカイブ

取材旅行

週末に長野方面に取材旅行に出かけました。

出発した時はザーザー降りの雨でしたが、現地に着いた時には傘がいらなかったのでとてもラッキーでした。

 

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中山道宿場町馬籠宿、木曽福島では五平餅やら栗を使った和菓子を堪能。

取材旅行ということも忘れてしばし観光気分に浸りました。

 

 

 

>2日目には開田高原を抜けて飛騨高山まで足を伸ばしました。

 

東京から飛騨高山に行くにはとても大変なのですが、長野を中継して行くとそんなに苦には感じずに秘境の小京都まで行くことができました。

 

飛騨高山では町並みを保存しており、風情のある佇まいの建物や町並みがとてもよく、散策を楽しみました。

 

ここでもすっかり観光を楽しみ、「飛騨牛〇〇」とか「飛騨牛の~」みたいなものを散々食べ歩くという、味覚という感覚をフルに活用していました。

 

 

 

・・・すでに取材ということは頭からスッポリ抜けていましたが、飛騨高山に行くまでの道すがらが紅葉満点で、それが何よりの収穫でとてもよかったです。

 

 

ここでも山や高原の風景を楽しみました。

 

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>今回長野を訪れた最大の目的はこの上高地でした。

 

この季節の上高地は紅葉の赤や黄色の葉の色と常緑樹の緑、そして岩肌と梓川の鮮やかな青といったように、とても色彩豊かな世界を作り出しています。

 

上高地はとても有名な観光地ですので、どれほど混んでるかと恐れていましたが、平日ということもあってとても快適にトレッキングすることができました。

 

>穂高を望む絶景と自然が織り成す美しい世界に終始ただただ感動しっぱなしでした。上高地に入るには沢渡で車を乗り捨ててそこから乗り合いバスにて現地に入らなければなりません。

この自然の風景を守らなければと思う人の気持ちが詰まった、それだけすばらしい場所です。

 

 取材旅行で一番大切なのは、現地にて感動することが一番だと思っています。

何も見ず、何も感じずでは制作につながっていきません。

 

現地で体中にこのエネルギーを吸い込み、感動し、それを形にしていければと思いました。

今回見たり感じたものが制作に反映されますように。

 

次の展覧会のいいインスピレーションが浮かべば・・・と思います。

 

世界文化賞

今年の世界文化賞が発表されました。

その中の彫刻部門にアニッシュ・カプーア氏が選ばれていました。

 

私が学部の頃、大学の招聘講義があり、その後に大学の近所のギャラリー(SCAI)で展示があり、そのオープニングパーティーに出てお話ししたことがありました。

 

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カプーア氏の作品は彫刻というよりもコンテンポラリーアートやインスタレーションといった新しい世界を展開しており、毎日絵筆や鉛筆片手に過ごすファインアートを主として制作している私にとってはとても衝撃的な体験でした。

 

作品と向き合うのは鑑賞ではなく、体験である。

一つ一つにフィロソフィーをもってそのコンポジションが決められる。

 

そう言っていました。

氏はたまたま私が手に持っていた物に何かを書こうと手を差し出したとたんに、それがスケッチブックであることに気付き「ノー」という仕草を続けざまにし、

「これはあなたの作品を描く空間であり、そこに私が何かを加えたらそれは私の作品になる。それはできない。」

と微笑みました。

 

空間に対する意識の高さというものを垣間見ました。

 

それから10年以上経ちました。今、作品を制作する時に、直接的でないにせよ影響を受けたことが何かの形になってるような気がします。鑑賞が体験になるように、モチーフや構図にフィロソフィーがあるように。

私にとっては一見全く関わりのないような世界観を持った作家のように思えますが「芸術の先生」でした。

 

 

 Photo by:SCAI THE BATHHOUSE 1999

 

 

昨日は和紙文化研究会の10月例会があり、出席しました。

DSCN3734.JPG今回の第245回例会では、東京藝術大学日本画第二研究室教授、関 出(せき いずる)先生にお越しいただき、「絵画組成物「膠」について」という講演でした。

 

最近、「和膠」の生産終了(廃業)に伴い、膠に関する様々な勉強会があります。

 

>>今回は、関先生のコレクションする様々な膠の原料サンプル、それらを元に作られた膠(関先生お手製も含む)、絵画にまつわる材料や原料をお持ちいただき、一堂に並べての講演でした。

その量の凄さに驚くばかりで、これまで絵画材料として見聞きしていたものの、現物を見たことがなかったものをすべて並べられ、眼福極まりありませんでした。

  

>>講演前に先生のお手伝いをしてサンプルを並べる作業は1時間かかりました。

  

 

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中には初めて見るものも沢山あり、コンテナから出して並べる都度に先生に「これは何ですか?」と聞かずにはいられない状況でした。

それに対して先生は丁寧に説明をしてくださり、講演前に個人授業を受けてるようで、楽しかったです。

 

今回の講演では膠だけではなく、媒材(バインダー)として使える原料も沢山見せていただきました。

 

珍しい原石や鉱石、動植物といった日本画の世界ならではの「天然」の世界が広がる様子はただただ感動でした。

 

>>先生から沢山のお話しを伺う中で、ポロっと「学生時代にこんな授業を受けたかったな~」と言ってしまいました。

 

関先生は学部2年生の頃の担任の先生でした。

 

 

DSCN3751.JPG先生には1週間の東北写生旅行に同行していただき、青森の八甲田山が見える麓から奥入瀬を歩いて十和田湖までスケッチしながら下るという、今思えばとても贅沢な写生旅行をした思い出があります。

 

夜、旅館を抜け出して(←全員)、先生と地元のスナックのようなところに行ってカラオケやったりお酒を飲んだりしたのもいい思い出です。

先生はとてもお酒が強かったです。

なので、色々教わったのは技法や材料というより、人生のイロハ的なものの方が多かったようです。(笑)

 

>>穏やかな語り口調で材料や原料の話をしている姿は10年以上前にお世話になっていた頃と全く変わらず、相変わらずユーモアのある楽しいものでした。

 

とても知識豊富で穏やかな先生ですが、兎角研究に関しては厳しい一面を持っているところもありました。

大学の紀要に投稿した際、査読があったのですが、何遍書いても赤入れが減らないものがあり、最終原稿の前に参考文献の一覧と手書きのコメントが大量に添付して届いたことがありました。

覆面のレフェリーなのに、それで関先生であることがすぐにわかりました。

 

博士論文の審査が通った後に先生にお会いした時には

「夜に深々と静かに降る雪のような人になりなさい。雨戸を叩くような大きな音を立てて降りしきる雪は積もりません。朝、雨戸を開けて一面の銀世界を作ることができるのは静かに降る雪ですよ。」

と言って下さったこともありました。

 

大学卒業後何年も経ちますが、こうやってまたお会いしてお話ししたり交流があることはとても幸せなことだと思いました。

 

TRENTENNE展

ONWARD GALLERYにて10名のグループ展を開催しております。

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昨日より始まりました。

 

今回の作品は風景と植物の組み合わせです。

植物だけでもなく、風景だけでもない、新しい試みをしてみました。

 いつもの彩度の高い色彩ではなく、天然の抑えた色合いでグラデーションを作ってみたり、色々と新しい作品に挑戦してみたものです。

 

 今回は20号と3号の2点の新作を出しています。

 

 日本画の絵具は天然に産出する鉱石を砕いた天然岩絵具と、天然にはない色を人工的につくった準天然(いわゆる人工)や合成と言われる岩絵具があります。

今回の作品についてはいずれも天然の岩絵具のみを使用して作画してみました。天然石の美しい色合いを大切にした作品をご高覧いただけましたら幸いです。

 

TRENTENNE トゥレンテンヌ展

2010年10月6日(木)~13日(水)

※9日(日)・10(祝)休廊

オンワードギャラリー日本橋

中央区日本橋3-10-5

℡03-3272-2331

昨日、膠文化研究会のワークショップに行ってきました。

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現在、伝統製法による三千本膠(和膠)の製造元の廃業に伴い、日本画家だけではなく三千本膠を使用する多くのユーザーが代替品に移行せざるを得ない状況になってきております。

 

これは兼ねてより危惧されていたことではありますが、日本画を描く上でなくてはならない媒材(接着剤)がなくなるということは画家にとって大問題です。

 

店頭に並んでいるのを当たり前のように買っていた時代はもう終わり、自分自身で材料についての知識や用法を見出さねばならず、こういった状況下において「膠文化研究会」という会の発足により膠について色々と勉強できる機会が与えられたことは大変有意義なことでした。

 

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今回の研究会のワークショップは「日本画科」のある教育機関の指導者及び、膠と関わりの深い専門家(修理修復従事者、書道家など)といった限定条件のついた招待者が参加できる貴重な会でした。

 

 

和膠に関する講演・報告と試用実習が主な行事内容で、製造元や製法の異なる6種類の膠をそれぞれテストしてみるという、個人でやるには手間のかかる実験をさせていただきました。

 

やはり、いつも使っている三千本膠と他のものは使い勝手や風合いが異なり、自分にあったものを見つけて使いこなせるようにならなければならないなぁ・・・と思いました。

 

日本画は、天然・自然の材料を相手にしています。

理由や原因はともあれ今後、「当たり前にある」というのがまたどんどん減ってくると思います。

 

そのことに対して決して無関心であってはならないというのが、日本画を扱う人間としての義務であると思い、今後も材料や技法についての研究・実習は怠らないようにしなければ・・・と改めて思うのでありました。

 

まずは今ある「当たり前」に感謝しつつ、それに傲慢になることなく大切にしていきたいと思います。

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